メダカの飼育において、水草は単なる装飾以上の役割を果たします。
水草がメダカに提供するものは、美しいビジュアルだけでなく、その生態系における安定した環境と、メダカ自体の生活の質の向上です。メダカと水草が共存することで、水槽内でのバランスが保たれ、メダカはストレスなく、また安心して生活することができます。
水草はメダカにとって、隠れ家であり、産卵の場であり、そして水質を安定させるフィルターの役割も果たします。特に、メダカの産卵には適した水草が必要であり、その選定には慎重さが求められます。
また、水草自体もまた、美しい環境を作り出し、観賞の価値を高めます。この記事では、メダカと相性の良い水草を紹介し、その特徴やメダカとの関わり、そして室内飼育と屋外飼育における異なるアプローチについて詳しく解説しています。
メダカと相性が良い代表的な水草(浮草)
メダカと古くから相性が良いとして育てられてきた水草(浮草)を紹介します。これらの水草は隠れ家、産卵床として活用できるため、メダカの繁殖に大きく貢献してくれます。
浮草は日本の冬に弱いため、寒くなる10月頃から室内に移動させるといった対処が必要になります。
ホテイソウ
ホテイソウ(またはホテイアオイ)は、南アメリカを原産地とする浮草タイプの水生植物です。
この植物は、その広がりやすい根からメダカが卵を産みやすく、そのため繁殖のサポートとしても利用されます。さらに、その高い水質浄化能力により、水交換の必要を減らす手助けをしてくれます。
一方で、ホテイソウは繁殖力が強いものの、低温には弱い性質を持っており、屋外での冬季飼育は難しい点があります。もし長期にわたって育てたい場合は、室内で保温しながら、かつ植物や水草の育成に適した照明を用いて十分な光量を浴びせることが重要です。
また、ホテイソウの葉が多くなると、その大きな葉で水面を覆い、メダカに光が届かなくなる可能性があるため、飼育容器には1~2枚程度を目安に配置すると良いでしょう。
特に、小さな鉢や45cm以下の小型水槽での飼育を考えている場合、通常のホテイソウよりも小さなミニサイズのものを選ぶことをおすすめします。
サンショウモ
サンショウモは、その独特な葉の形を持つ浮草で、”サルビニア・ククラータ”とも呼ばれ、特に外国製のものがこの名前で販売されています。
メダカにとっては、隠れ場所としてだけでなく、産卵の場としても利用され、成長速度が速く根っこから栄養を吸水するので水質浄化の効果にも期待できます。
しかしながら、サンショウモが増加しすぎると、メダカや他の水草に光が届かなくなる可能性があるため、定期的な調整が必要です。
育成自体は日光を十分に提供することで容易に行えますが、低温にはやや弱い特性を持っているため、冬季は室内での飼育をお勧めします。
アマゾンフロッグビット
アマゾンフロッグビットは、多くの場合、屋外でのメダカ飼育に推奨される水草ですが、寒冷には弱い性質を持っているため、越冬を視野に入れるならば、室内育成が適しています。
その根はメダカの産卵エリアとして機能し、ホテイソウとは異なり、高さがそれほど伸びないため、小規模な水槽でも利用が可能です。
水質の浄化能力を持ち、浮草としての特性を利用して、定期的に増えた分を取り除くことで、水質劣化もコントロールできます。なお、十分な光量が必要なので、室内で管理する場合は水槽用ライトが必要不可欠です。
暖かい時期であれば、屋外での育成も可能ですし、その葉が強い日光を遮ることで、水温の上昇を緩和する効果もあります。
メダカの室内飼育と相性が良い水草
カボンバ
カボンバは、アクアショップに行かなくてもホームセンターなどでも入手可能で安く買うことができる水草です。
カボンバの葉は密度が高く、メダカにとって隠れ場所や産卵のスポットとして利用されます。アナカリスやマツモと同じく、育てやすい水草としてよくおすすめで紹介されます。
ただし、カボンバは底床への植え付けが必須であり、光量にも敏感な水草なので、アナカリスやマツモと比較すると育成の難易度が若干上がります。
育てるときは、水草専用の照明を利用することをお勧めします。さらに、メダカがストレスを感じる可能性のある高水温(30度以上)もカボンバにとっては避けるべきであり、水槽を温度上昇が抑えられる場所に設置するか、水槽用の冷却ファンを利用するなどの対策が必要となります。
スクリューバリスネリア
スクリューバリスネリアは、水草水槽で後景として植えられることが多い水草です。強い光やCO2の供給を必要とせず、初めての水草育成者でも手軽に育てることができます。
メダカが卵を産むのに特に適した水草ではないものの、最大で約60cmまで成長するその背丈は、メダカにとっては有益な隠れ場所となります。また、葉が柔らかいので、メダカが傷つく心配もありません。
白いメダカを飼育している水槽に後景に配置すると、メダカの色がより美しく見え、捻れたテープ状の姿が緑のカーテンのように見えて景観を美しくまとめることができます。
アヌビアスナナ・プチ
アヌビアスナナ・プチは小さなサイズと遅めの成長ペースにより、30cm程度のコンパクトな水槽にもスムーズにフィットします。従来の大きいアヌビアス・ナナと同様に、頑健で、低光量と低水温の環境でもしっかりと育つ、手間のかからない水草です。
メダカにとっての隠れ場所としても機能し、水槽内で圧迫感を生むことなくレイアウトを楽しむことができます。底床への植植えはもちろん、流木への活着も可能で、その扱いやすさが魅力です。
成長がゆっくりなので、トリミングの必要もほとんどありません。ただし、その遅い成長が、葉にコケが発生する原因となることもあります。そうした場合、ミナミヌマエビなどのコケを食べる生体を加えるか、葉を傷めないように指やスポンジで軽くこするなどしてコケを取り除くと良いでしょう。
グリーンロタラ
グリーンロタラは、メダカ飼育者だけでなく、熱帯魚飼育、水草水槽を楽しむ人などあらゆるアクアリストに好まれる水草です。
グリーンロタラは、水中で育つ葉(水中葉)と水上で育つ葉(水上葉)とで、葉の形状が異なります。水中では葉が尖っているのに対し、水上では葉が丸くなります。
特に暖かい季節には、水面から飛び出して水上葉が茂るので屋外飼育で植える人も少なくありません。成長が早い水草なので水質を浄化する手段として利用するのもおすすめです。
日本の冬では越冬できずに枯れてしまうので、1年を通して維持したい場合は室内飼育がおすすめです。類似する水草にはパールグラスが挙げられます。
ウィローモス
ウィローモスは、その細く長い枝葉が特徴的な水草で、メダカの隠れ場所として理想的です。
この水草はメダカが卵を産み付けるのに適しており、そのため産卵床としても優れています。陰性植物であるため、日陰でも育ち、室内飼育においても、アクアリウム専用の照明があれば十分に育成できます。
ウィローモスは根を張らない水草なので、底床に植えるタイプのレイアウトは作れませんが、流木や石に活着させることは可能です。
テグスや糸を使って巻き付けて固定し、活着させる方法がありますが、手間を省きたい場合は、初めから流木に活着しているものを選ぶと良いでしょう。
レイアウトに特にこだわりがないなら、水槽に入れておくだけでも充分に成長し、メダカにとっての隠れ家や産卵床として機能します。
メダカの屋外飼育と相性が良い水草
メダカの屋外飼育と相性の良い水草は日本の寒さに耐えられるかが重要なポイントになります。水草の多くは外来種で越冬できずに枯れてしまう品種が多いです。
メダカは冬になると冬眠するので隠れ家がないと点滴に襲われてしまったり、ストレスを溜めて越冬できなくなる恐れがあるので、隠れ家として機能する冬に強い水草を選ぶ必要があります。
アナカリス
アナカリス(オオカナダモ)は、その頑健さと繁殖のしやすさから、手軽に育てることができる水草として知られています。
この水草は、低い光量やCO2、肥料が少ない環境でもしっかりと育つため、アクアリウム初心者にも特に推奨されます。植え付けるだけでなく、水面に浮かべておくだけでも成長し、メダカの産卵床や水槽のレイアウト作りにも便利です。
アナカリスの迅速な増殖を利用して、メダカが卵を産んだ部分を切り取ることで、卵を簡単に分けることができます。さらに、増えた部分を切って、他の水槽でも利用することもできます。
寒さにも強いこの水草は、屋外での育成にも適しています。
オーストラリアンノチドメ
オーストラリアンノチドメ(アマゾンチドメグサ)は、迅速な成長を特徴とする南アメリカ出身の水草で、その速さから水中の余計な栄養を効率よく吸収し、高い水質浄化能力を持っています。
20度以上の水温では比較的大きい葉っぱを増やしながらどんどん増えていきますが、20度を下回ると伸びる速度が落ちて葉っぱの大きさも小さくなっていきます。
とはいえ、日本の冬も耐えることができるので越冬ができます。水上葉は枯れてしまいますが、水中葉はしっかり残り、メダカの隠れ家になります。
姫睡蓮(ひめすいれん)
姫睡蓮は、その耐寒性から屋外での越冬が可能な温帯性の植物です。
そのコンパクトなサイズが特徴で、水面に広がる葉がメダカに届く光を遮ることなく、屋外飼育における多くの天敵、例えば鳥や哺乳動物からメダカを守る効果的な隠れ家となります。また、その小さな体格ながらも、夏の強い日差しを和らげる役割も果たします。
視覚的な魅力もあり、水面には赤や白、黄色などの美しい花を咲かせ、視覚的にも楽しませてくれます。日光を好むこの植物は、日当たりが良い場所での飼育が推奨されます。
ウォーターコイン
ウォーターマッシュルーム、またはウォーターコインとしても知られるこの水草は、コインの形をした愛らしい葉が特徴です。
水上でも水中でも手軽に育てることが可能なので、屋内外を問わず、多くのメダカ愛好者に好まれています。寒さにも比較的強く、寒冷地を除けば、屋外での越冬も可能です。
原産地は北アメリカから中央アメリカにかけてで、日本でも帰化しているとされています。ランナーと称される茎を切り取ることで、簡単に増やすことができます。
メダカとは無関係に、その見た目の愛らしさから観賞用としても評価が高いです。屋外のビオトープなどでは、水面から顔を出しているその姿がよく目にする、屋外飼育の定番品種となっています。
ウォーターポピー
ウォーターポピー、またはミズヒナゲシは、その葉が水面に浮かぶ南アメリカ出身の浮葉植物です。
その根茎は水中に位置し、一方で葉は水面を飾ります。寒冷にはやや敏感であり、年間を通してその緑を楽しみたいならば、室内での栽培が推奨されます。もっとも、屋外での栽培では、一度枯れたとしても、温かくなると再び新しい葉を展開します。
産卵床としては最適ではありませんが、水面に伸びる茎と葉がメダカにとって安全な隠れ家となり、その特異な大きな葉が水槽のレイアウトに彩りを添えます。さらに、その葉が作る陰は、屋外での飼育時の高水温を和らげる役割も果たします。
栽培には一定の光量が必要となるため、室内での飼育では適切な照明を設置しましょう。また、花は6月から10月にかけて楽しむことができます。
メダカと水草の相性が良い理由は?
水草がメダカの環境において果たす役割は多岐にわたり、生態系を保つ上で極めて重要です。特に、彼らの生存空間として機能している面が大きく、水草が生み出すメリットには以下のような要点が挙げられます。
- メダカの隠れ家を作れる
- 酸欠の予防に役立つ
- 水質浄化に役立つ
- 産卵する場所を作れる
- 水草が非常食や補食になる
メダカの隠れ家を作れる
まず初めに、水草はメダカたちが安心して生活できる空間を作ることができます。水草はメダカにとって安全な避難所となり、ストレスの緩和や天敵からの保護など、身を守る場として大きく役立ちます。特に屋外での飼育環境では、鳥などの外敵からメダカを守るシェルターとしての役割も担います。
酸欠の予防に役立つ
また、水草は生態系における酸素の供給源ともなります。
光合成によって、水草は二酸化炭素を吸収し、必要不可欠な酸素を水中に放出します。これにより、メダカが健康に活動できる水環境が保たれると同時に、水質の向上にも寄与します。
水質浄化に役立つ
水草のもう一つの重要な機能は、水環境の浄化です。メダカやその他の生き物が産み出物や残飯が生成するアンモニアは、バクテリアによって最終的に硝酸塩へと変化します。
通常、硝酸塩の除去は水の入れ替えに頼る部分が多いのですが、水草はこの硝酸塩を自らの栄養として利用することで、その過程で水環境を自然に浄化し、安定した状態を保ちます。
産卵する場所を作れる
水草はまた、メダカにとって重要な繁殖の場を提供します。
メダカは産卵の際、水草の葉に卵を産み付けます。そのため、水草は単なる飾りや環境の一部としてだけでなく、繁殖をするために非常に大切なのです。メダカを増やしたい人にとって水草の存在は欠かせません。
水草が非常食や補食になる
水草の新芽など柔らかい水草はメダカの食糧源となり、メダカの生存に直結します。つまり、非常食として機能するため、餌が不足した場合に餓死を予防することができます。
また、水草が補助食になるだけでなく、水草があることでプランクトンが発生し、それがメダカの非常食や捕食になるケースもあります。
メダカ水槽レイアウト
前景の水草 | ウィローモス |
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後景の水草 | パールグラス |
水槽では背が高くならない水草を前景に植えて、背が高くなる水草を後ろに植えることでレイアウトのバランスが良くなります。