火傷をした後に保冷剤を離すと痛みを感じるのは、冷却によって一時的に抑えられていた炎症が再び活発になるためです。この痛みは、火傷した皮膚組織の回復過程において、血流が正常化しようとする過程の一部と考えられます。
対策としては、火傷直後に冷水で患部を冷やし、清潔なガーゼで覆うことが基本です。さらに、保湿クリームや炎症を抑える軟膏を使用して皮膚を柔らかく保つと治りが良くなりますまた、必要に応じて解熱鎮痛剤を用いることが効果的です。痛みが強い場合や、火傷の状態が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。
火傷をして保冷剤を離すと痛い時の原因
火傷した皮膚組織の炎症が進行している
火傷をした皮膚組織では、炎症反応が進行しています。これは、身体が損傷した組織を修復しようとする自然な反応です。炎症のプロセス中には、血管が拡張し、損傷部位への血流が増加します。これにより、皮膚が赤くなり、熱を帯び、腫れ上がります。保冷剤を使用することで一時的にこれらの症状が緩和されますが、保冷剤を離すと、血流が通常の状態に戻り、痛みが再び顕著になることがあります。
血流低下後の血流復旧が痛みを引き起こしている
保冷剤を当てることで、火傷部位の血流が一時的に低下します。これは、冷却によって血管が収縮し、血流が減少するためです。しかし、保冷剤を取り除くと、血管が元の状態に戻り始め、血流が急速に増加します。
この血流の急激な復旧は、損傷した神経組織を刺激し、痛みを引き起こす原因となります。この痛みは、火傷の治療過程で避けがたいものであり、火傷部位の回復過程を示す兆候とも言えます。
温度変化によって神経が敏感になっている
火傷をすると、皮膚の神経が損傷を受け、非常に敏感になります。温度変化、特に急激な冷却とその後の温度回復は、これらの敏感になった神経を刺激し、痛みや不快感を引き起こします。
実際、保冷剤を使った冷却は痛みを軽減する一時的な手段に過ぎませんが、保冷剤を取り除いた後に体験する痛みは、神経が通常の温度に反応している証拠でもあります。このような痛みは、火傷した部位が回復している途中であることを示しているものの、痛みの管理は火傷治療の重要な部分を占めます。
火傷の重症度の判断基準
火傷の範囲の基準（手のひらサイズを1%として計算）
火傷の範囲は、全身の火傷面積を評価する際の重要な指標です。成人の場合、被害者の手のひら（指を含む）は体表面積の約1%と見なされます。この比率を用いて、火傷の広がりを評価し、全体の重症度を判断します。火傷が体表面積の10%以上に及ぶ場合、それは重度の火傷と見なされ、特に子供や高齢者ではさらに深刻な状況を示します。
深さの基準（表皮だけ、真皮まで、皮下組織まで）
火傷の深さは、表皮のみに影響する第一度、真皮に達する第二度、さらに深く皮下組織まで影響する第三度の火傷に分類されます。第一度の火傷は、軽度で主に赤みや痛みが特徴です。
第二度の火傷では、水ぶくれやより強い痛みが生じ、治療がより複雑になります。第三度の火傷は、最も深刻で、皮膚の再生能力が失われるため、しばしば移植が必要になります。
発生部位の基準（顔面、手足、生殖器などの特定部位）
火傷の発生部位も重症度を判断する重要な要素です。顔面、手足、生殖器などの機能的、美容的に重要な部位の火傷は、同じ範囲や深さの火傷でも、より深刻に評価されます。これらの部位の火傷は、呼吸困難や運動能力の低下、外見の変化など、長期的な影響を及ぼす可能性があります。
合併症の基準（感染の有無、ショック状態）
火傷による合併症の有無もまた、火傷の重症度を決定づける重要な要素です。特に感染は、火傷治療における重大な合併症であり、治療過程を複雑にし、回復時間を長引かせます。また、広範囲の火傷はショックのリスクを高める可能性があり、これは緊急の医療介入を必要とする致命的な状態に至ることがあります。
火傷に効くおすすめの市販薬
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、出血を抑制する薬であり、火傷による炎症や色素沈着を軽減する効果があります。この薬は、血液中のプラスミンの活動を抑えることで、炎症反応を緩和し、組織の修復を促します。
トラネキサム酸は、特に火傷後の赤みや色素沈着が気になる場合に有効で、経口摂取や局所塗布で使用されます。副作用は比較的少ないものの、使用前には医師や薬剤師との相談が推奨されます。
アットノン・アトキュア
アットノンとアトキュアは、共にヘパリン類似物質を主成分とする市販薬で、火傷や傷跡の治療に推奨されます。これらの薬剤は、皮膚の修復を促進し、炎症を鎮める効果があります。アットノンは、特に傷跡の軽減や炎症後の赤みを目立たなくするのに役立ち、アトキュアは皮膚のごわつきや乾燥に対しても効果を発揮します。どちらの薬も塗布タイプであり、日常的なケアに簡単に取り入れることができます。
リンデロンVsクリーム
リンデロンVsクリームは、ステロイド成分を含む市販薬で、皮膚の炎症やかゆみ、赤みを抑える効果があります。特に湿疹や皮膚炎、火傷後の炎症などに対して効果的であり、迅速な症状の改善が期待できます。リンデロンVsは、適切に使用することで、短期間での症状の軽減ができますが、長期間の使用や広範囲への使用は避け、使用前には必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。
病院へ行くべき火傷の症状
広範囲にわたる火傷（体表面積の10%以上）
体表面積の10%以上を覆う広範囲の火傷は、緊急の医療介入を必要とします。このような火傷は、体の大きな部分が損傷を受けているため、感染リスクの増加、体温調節の失敗、さらには重度の脱水症状を引き起こす可能性があります。広範囲の火傷は、回復に長い時間を要し、時にはスキングラフト（皮膚移植）などの複雑な治療が必要になることがあります。
第二度以上の深い火傷
第二度以上の火傷は、深刻な痛み、水ぶくれ、そして皮膚の深い層への損傷を伴います。これらの火傷は、表皮を超えて真皮にまで達し、適切な治療が行われない場合、感染や長期的な瘢痕（はんこん）形成のリスクが高まります。第二度の火傷以上になると自己治療だけでは不十分で、専門的な治療が必要となるため、速やかに医療機関を受診することが重要です。
重要な部位（顔、手、足、性器など）の火傷
顔、手、足、性器などの重要な部位に発生した火傷は、機能的または美容的な理由から、特に注意を要します。これらの部位の火傷は、日常生活における基本的な機能に影響を及ぼす可能性があり、顔や手の火傷は、特に表情や手の動きに影響を与えることがあります。また、これらの部位は感染のリスクも高く、適切な処置と監視が必要です。
感染の兆候（赤み、腫れ、膿、発熱）
火傷部位に感染が生じている兆候としては、赤み、腫れ、膿の発生、発熱が挙げられます。これらの症状が見られる場合、火傷が細菌に感染している可能性が高く、未治療のまま放置すると、感染はより深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。感染は火傷の治療プロセスを遅らせ、回復に必要な時間を延長します。感染の疑いがある場合は、直ちに医療機関を受診し、適切な抗生物質治療を受けることが必要です。
自宅でのケア方法
冷水で冷やす
火傷をした直後は、できるだけ速やかに患部を冷水で冷やすことが推奨されます。この初期対応は、火傷部位の痛みを軽減し、損傷を最小限に抑えるのに役立ちます。
ただし、氷や冷凍品を直接肌に当てるのは避け、流れる冷水で5分から15分間、優しく冷やしてください。これにより、火傷による熱が周囲の健康な組織に伝わるのを防ぎ、回復過程を早めることができます。
清潔なガーゼで覆って冷やす
火傷した部位は、感染のリスクを減らすためにも、清潔なガーゼや布で覆うことが重要です。冷水で十分に冷やした後、乾燥を防ぎ、患部を保護するために、清潔なガーゼやバンドエイドで慎重にカバーしてください。
このとき、ガーゼを火傷部位に強く押し付けることは避け、空気が通る程度にゆるやかに固定しましょう。患部を清潔に保ちながら、外部からの刺激を防ぐことができます。
ローションなどで保湿する
火傷の回復過程で皮膚が乾燥しがちなため、適切な保湿ケアが必要です。アロエベラジェルや低刺激性の保湿ローションを使用して、患部を優しく保湿してください。保湿は、皮膚のバリア機能を支え、痛みやかゆみを和らげる効果が期待できます。ただし、水ぶくれや生傷がある場合は、製品の成分が刺激にならないよう、使用前に成分を確認するか、医師に相談してください。
解熱鎮痛剤で痛みを軽減する
火傷による痛みは非常に強いことがあり、日常生活に支障をきたす場合があります。必要に応じて、市販の解熱鎮痛剤を使用することで、痛みを軽減することができます。イブプロフェンやアセトアミノフェンなどが一般的ですが、使用する際は、用量や用法を守り、長期間の使用は避けてください。また、体質やアレルギー歴によっては使用できない場合もあるため、不明点があれば医師に相談することが重要です。
