陰性水草は、強い光が不要であるため、維持と成長が比較的容易な水草を指します。
このタイプの水草は、一部の種類においては室内の照明のみで育成可能であり、アクアリウムの初心者でもアクセスしやすいという大きな利点があります。
陰性水草を上手く活用するためには、「成長後のサイズ」、「陰性水草としての特徴」、「各種の個別の特性」を把握することが、水槽のレイアウトを効果的に計画する上で重要となります。
本記事では、陰性水草の取り扱い方や、いくつかの代表的な陰性水草の種類とその特徴についてご紹介します。
陰性水草とは?育て方の考え方
陰性水草は光量がいらない
陰性水草は、薄明るい環境でもしっかりと育つ能力を有しており、特定の種類は室内の一般的な蛍光灯下でもゆっくりとした成長を遂げます。
例えば、アヌビアスナナは、蓋がされた容器内で、あまり明るくない部屋に放置されても、腐ることなく、その状態を保つことができるほど耐陰性があります。
もちろん、すべての陰性水草が低光量の環境でも同様に生き残れるわけではないですが、高価なライティング設備を必要とせず、美しく育てることができるため、アクアリウムの初心者にとって、入門用としておすすめできる選択肢となります。
必要な光量早見表
水槽規格 | 陰性水草に適した明るさ |
---|---|
15cm | 190~200lm |
20cm | 190~200lm |
30cm | 300~500lm |
45cm | 750~1,000lm |
60cm | 1,000~2,000lm |
90cm | 3600lm~ |
主な基準参考商品:リーフグロー、suisaku300~、KOTOBUKIツイン、GEXパワーⅢ、アクロtriangle
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陰性水草は枯れづらく育てやすい
陰性水草には丈夫な品種が多く、初心者でも育てやすく、枯れたり溶けたりしにくい水草が多いです。
中でもアヌビアスナナやミクロソリウム、クリプトコリネは丈夫な種類が多いです。
初心者向けの陰性水草を選んでレイアウトを組めば、神経質にならずに水草水槽を維持することができます。
金魚とか水草をバクバク食べちゃう魚の水槽には、アヌビアスナナなどの固い水草を入れた方が景観を損ねなくて良いよね
陰性水草の多くはCO2なしでもOK
陰性水草はCO2なしでも綺麗な姿を維持できる品種が多いです。もちろん、意地だけでなく株の増殖や新しい芽を出してくれますが、成長速度はCO2がない分、ゆるやかです。
CO2なしの育成はあくまで、なくても元気な個体なら維持や成長が見込めるという意味であって、小さすぎる株や不調な水草は成長スイッチが入らずダメになってしまうことがあります。
コレクション性の高いブセファランドラなどは放置して管理できる場合もありますが、CO2を添加している方が枯れたり溶けたりすることを避けることができます。
枯れたり溶けたり原因はCO2の有無だけなく、水質が大きく関係するから多角的に考察すべきだよ
陰性水草のレイアウトのコツ
水槽の中腹や素材の影の部分に
陰性水草はロタラなどのように水面まで茎が伸びるタイプの水草が極めて少なく、根元から放射状に生えるロゼット型の水草が多いです。
ロゼット型の水草は品種によって最大サイズが決まってきます。高さが10cm以下にしかならない品種、15cm以下にしかならない品種とマチマチです。
もちろん高さが50cm以上になるテープ状の陰性水草もありますが、水槽内の栄養や光量、CO2によって大きさをコントロールすることは出来ます。
以上のことを踏まえると陰性水草のレイアウト配置は中景のワンポイントや流木や石の周りに植えるのがベストです。
クリプトコリネバランサエなどのテープ状の水草は最も後ろの後景に植えるのがセオリーです。
光が直接当たらないところへ
陰性水草の中には光が強すぎることで色が白くなってしまったり、葉が小さくなってしまうことがあります。
クリプトコリネの中には光量が強いことで深い緑から赤茶色に変化する品種もあります。
コレクション製の高いブセファランドラは葉焼けや葉の縮小で価値が落ちることがあるのでライトの明るさや配置は気をつける必要があります。
流木に巻き付けて置くだけOKな場合も
陰性水草は管理の条件や手間が緩いため、魚をメインに鑑賞する水槽では置くだけレイアウトの素材として重宝します。
特に代表的なのはコケの付着に強く、枯れにくく、木酢液で綺麗にできるアヌビアスナナです。
アヌビアスナナは流木や石に根を活着させることが出来るため、流木や石に巻き付けて水槽に入れるだけでレイアウトを完成させることができます。
この方法はミクロソリウムやボルビティスでも同じように再現することができます。
陰性水草の種類とそれぞれの特徴
リトレラウニフローラ
リトレラウニフローラは前景草としても植えることが出来る水草です。見た目は多肉植物のように葉が太く伸びるのが最大の特徴です。
成長速度がかなり遅く、CO2を添加してもゆるやかです。流木や石などの陰りに植えたり、小さな水槽でリトレラだけを固めて植えることでまとまりのあるレイアウトを組むことが出来ます。
アヌビアスナナ
陰性水草の代表的な品種です。値段が安く、水に浸っていればほぼ枯れることがない頑丈な水草なので初心者にもピッタリです。
アヌビアスナナは丸みのある葉が特徴的で、伸長する根っこは石や流木に活着させることもできるため、レイアウトへの使い方は多彩です。
アヌビアスナナは強い光がいらず、葉が硬いので食害にほぼあいません。そのため、金魚水槽にもおすすめされています。
アヌビスナナプチ
アヌビアスナナをつまむことができるほどの小さい品種で、成長しても小さいままです。
アヌビアスナナプチも強い光量、CO2を必要とせず、綺麗な状態を維持することができます。ライトの明かりが強いだけで新芽をどんどん出すこともあります。
アヌビアスナナプチもアヌビアスナナと同様に根っこが流木や石に活着するので小さい水槽から大きい水槽まで色んなレイアウトを組むことができます。
ラゲナンドラ ミーボルディ
ラゲナンドラ ミーボルディは陰性水草の中でも葉幅が大きい水草です。もはや葉っぱの形は楕円形(葉の形状通称では卵形)というのが正しいでしょう。
写真で見ると巨大水草に見えますが、サイズは葉の長さは6cm前後、葉幅は2.5cm〜4cmほどになります。根っこから葉っぱまで細長い茎が伸びます。
レイアウトには中景に取り入れるのがセオリーです。茎が細いために空いた根元を隠すために前景草と組み合わせるといった方法を取り入れるのが綺麗に見せるポイントです。
ミクロソリウムプテロプス
初心者向けとして安価に販売されることが多いミクロソリウムプテロプス。
見た目は道端にも生えていそうな根元から放射状に広がるロゼット型で、水中に茂みを作りたい時にピッタリです。ミクロソリウムプテロプスは順調に育つと葉に子株をつけて増えます。
流木や石の隙間に植えるのもよし、シンプルにボトル水槽の中央に配置するのもよしで初心者でも扱いやすい水草です。
ミクロソリウムナローリーフ
ミクロソリウムナローリーフはプロプテスよりも葉の幅が細く、細長いのが特徴的です。植えるよりも流木に活着させてレイアウトの含みを持たせるワンポイントに使用されることが多いです。
ミクロソリウム トライデント
ミクロソリウムトライデントは1枚の葉が複数に分かれているのが特徴的で、パッと見はナローリーフにも見えます。
ナローリーフと同様に植えるよりも流木に活着させてレイアウトの含みを持たせるワンポイントに使用されることが多いです。
ミクロソリウム ウェンディロフ
ミクロソリウムウェンディロフは葉っぱの先端が短く縮み上がったように枝分かれしているのが特徴的です。
ウェンディロフをレイアウトに用いる時は小石に巻き付けて使うことが多いです。
ウェンディロフは根っこが出る株の部分から葉っぱまで、細長い茎が伸びることがあるので、小石に巻き付けたウェンディロフを親石や副石周りの余ったスペースに置くことでレイアウトの隙間を上手くカバーすることが出来ます。
ボルビティスヒュディロティ
ボルビティスヒュディロティはシダ系の水草で流木や石に活着しやすいです。また、透明感もありつつ、深い緑色のギザギザした葉っぱを広げる姿は、流通する水草に類似するものがありません。
ボルビティスは軟水かつTDSが低い水質を好むため、水質管理が上手くできない初心者では育てづらい傾向があります。
また、子株は小さいものの、成長すると大きくなるため、20cm〜30cmの水槽では成長と共にレイアウトバランスが崩れる恐れがあるので45cm以上の水槽から起用することをおすすめします。
クリプトコリネ ベケッチー
クリプトコリネ ルーケンス
クリプトコリネルーケンスはべケッチーと同様に5cm〜10cm程度の長さにしか成長しません。ただし、葉っぱの幅は1cm前後と細く、葉っぱ全体の形は細長くなります。
ルーケンスの子株は5cm以下なので、前景をルーケンスだけで固めて水草の茂みを作るのもレイアウトを作る選択肢の1つです。
陰性水草の中では珍しい前景草に分類できる水草です。
クリプトコリネ バランサエ
クリプトコリネバランサエはクリプトコリネの中でも大型に分類される品種です。15cm〜60cmまで伸びるテープ状の水草で、1cm〜2cmの葉幅に細かく波打った姿が特徴的です。
さらにバランサエは光量や水質、栄養によって明るい緑色から赤黒い色まで変化します。
バランサエは後景に植えるのがセオリーで、陽性草のロタラ系との組み合わせはバランスが取りづらい傾向にあります。
クリプトコリネウェンティーグリーン
クリプトコリネウェンティーグリーンは5cm程度にしか大きくならない水草で、楕円形の葉っぱが特徴的です。
co2を添加しなくてもゆるやかに成長するため、初心者でも育てやすい水草です。ウェンティーグリーンには”ゲッコー”と名前のついたタイプもあり、よりライトグリーンに近いのはゲッコーです。
大きな水草ではないため、前景〜中景に植栽します。
クリプトコリネウェンティ ブラウン
クリプトコリネウェンティブラウンは光量や水質によって、深緑から赤褐色にまで変化します。
ライトの明るさが強くなるほど赤色になり、場合によってはピンク色に近い色になることもあります。
名前の通り、強くない光量下では茶色になるので、前傾を緑系、後景に赤系の水草を植えたい時にウェンティブラウンを中景に植えることで色の調和を保ちやすくなります。
また、ウェンティブラウンは流木に巻き付けて活着させることもできるのでレイアウトの幅は大きいです。
クリプトコリネウェンティブラウンは大きいものだと15cm程のサイズにもなるため、45cm水槽以上で育てることをおすすめします。
スクリューバリスネリア
スクリューバリスネリアは名前の通り、ねじれるように葉が伸びる水草で、和名ではネジレモと呼ばれます。
テープ状の形状をしていて、成長すると40cmほどの長さになります。後景にテープ状の水草を配置したい人におすすめで、水質にうるさくないため、初心者でも育てることができます。
大きさは40cm程になると説明しましたが、小さいサイズは7cm〜10cm程で、それ以上の高さになったらトリミングをすることで小さい水槽レイアウトにも取り入れることができます。
タイガーバリスネリア
タイガーバリスネリアはテープ状の水草で、10cm〜1mにまで伸びます。また、茶色の斑点が葉っぱに現れる特徴があります。
育成は簡単で初心者にも優しい水草です。葉っぱは長く育ちますが、トリミングで長さ調節をすれば30cm水槽でもレイアウトに加えることができます。
テープ状水草なため、配置はもちろん後景一択です。
アナカリス
アナカリスは金魚藻と呼ばれたり、メダカ水槽に用いられる馴染みのある水草です。
アナカリスは光量が乏しい環境でも問題なく育ち、全くの暗闇の中でも増殖するほどの生命力を持ちます。もちろん、ライトを照らすことで透き通るようなライトグリーンを見ることができるので景観にも期待できます。
アナカリスはいくらでも伸びるのでレイアウトを組むなら後景として用います。
ブセファランドラ クダカン
ブセファランドラは採取した場所によって名前が異なり、形状も変わります。基本的には楕円形の形をしたものが多いですが、葉にウェーブがかかっているもの、そうでないもの、色合いが異なるものと様々なのでコレクション性が高いです。
ブセファランドラは中硬度で育ちやすい品種が多いため、日本の水道水とマッチすることが多く、アクアリウム初心者でも比較的育てやすい水草になります。
主に石素材にテグスなどで巻き付けて、活着させレイアウトに組み込みます。レイアウト素材の中腹や足元にさりげなく配置するのが無難ですが、溶岩石と組み合わせてブセファランドラだけでレイアウトを組むのもおすすめです。
ウィローモス
ウィローモスは日本にも自生しているカワゴケ科のコケ植物で、綺麗な河川や湿地帯でも見かけることができます。
co2がなくても簡単に育ちますが、白調の偏った光の強いLEDライトでは上手く育たずに茶色くなって枯れてしまうことがあります。そのため、ウィローモスの育成に失敗したくない人は水槽ライト選びにも気を使った方が良いです。
ウィローモスをレイアウトに用いるときは、ウィローモスを1cm〜2cm程度のサイズに切り刻み、レイアウト素材にテグスで巻き付けて使用します。
あまり一本が長いウィローモスを巻き付けると不恰好になるので、短い状態で巻き付けて成長に応じてトリミングをして形を整えるのがおすすめです。
南米ウィローモス
南米ウィローモスはウィローモスとは違って、三角形の形に成長します。
ウィローモスと比べてライトの明るさや色調にうるさくないため、アクアリウム初心者が育成に失敗することは少ないでしょう。
南米ウィローモスをレイアウトに用いるときは、南米ウィローモスを1cm〜2cm程度のサイズに切り刻み、レイアウト素材にテグスで巻き付けて使用します。
フレイムモス
フレイムモスはウィローモスや南米ウィローモスが横に伸びていくのに対して、水面に向かって伸びていくのが特徴です。
フレイムモスは中硬度でも問題なく育ち、成長が早いこともあって調子を落としにくいため、初心者でも育てやすいです。
フレイムモスは石や流木にテグスやモスコットンを使って巻き付けることで活着させて使用するか、レイアウト素材の隙間に差し込んで使用します。レイアウトのワンポイント素材としておすすめです。
アマゾンソード
アマゾンソードはロゼット型の水草の代表格です。ライトグリーンの色と広線形の葉が何よりも葉っぱらしいと思える水草です。
水上葉は長い茎から幅のある葉っぱを伸展しますが、完全な水中葉になると根本から葉っぱが飛び出すような姿になります。
アマゾンソードは主に中景に植えるのがおすすめですが、後景にテープ状の水草や有茎草(ロタラなど)を用いない場合はアマゾンソードがその役を担う場合があります。